ライフステージの変化も力に。店舗から体現する企業カルチャーと一体感
株式会社リビングハウス
お客様に直接向き合い、寄り添うことのできる店舗スタッフの仕事。やりがいが大きい反面、ライフステージが変化する中で「この先も長く現場で活躍できるだろうか」と不安を感じる瞬間もあるのではないでしょうか。さらに全国展開する小売業であれば、本社との関わりも普遍的な課題です。
しかし、全国に32店舗を展開する株式会社リビングハウスでは、そんな障壁を越えて全社で一体感を醸成し、多彩なスタッフが最前線で活躍しています。本記事では、今年3月に導入された「新人事制度」の背景にある経営・人事の想いと、産休・育休を経て活躍する女性社員のリアルな声を織り交ぜながら、変化を恐れずにビジョンを共有する「新しい組織のつながり方」に迫ります。
時代に合わせてアップデートされる「スピリッツ」
前半は、およそ12年の店舗経験の後、産休・育休を経て10年以上人事を担当されている経営管理本部 HRサポート部 部長の近成さんにお話を伺います。

――長く会社を見てきた近成さんの視点から、リビングハウスの「変わらない部分」「変わった部分」を教えてください。
近成さん:変わらない部分として、当社で大切にしている価値観や考え方をまとめた「リビングハウススピリッツ」という冊子があります。これは私の入社した26年前から変わらず存在していて、時代背景や組織の状態にあわせて都度アップデートされてはいますが、根底にあるものは変わっていません。店舗数拡大や上場によって組織規模は大きく変化しながらも、仕事や社員に対するベースとなる考え方は伝統として受け継がれていると感じています。
とはいえ、変化に抗っているわけではありません。歴史のある企業になればなるほど変わることへの抵抗が強いものだと思いますが、当社はスピリッツに「革新」や「挑戦」を掲げているため、変化に対して前向きなマインドセットを持った人材が多いのです。社員同士でどんな未来を作りたいかというような会話がもたれ、過去よりも未来を志向するカルチャーが育まれています。
長く続けることは、メリットにもデメリットにもなり得ますが、当社は組織を構成する一人ひとりの努力によってポジティブな方向に作用できている喜ばしい状態なのだと思います。

――リビングハウススピリッツ、拝見しました。内容そのものだけでなく、お話を伺った社員の皆さんが口々にスピリッツについてお話しされたり、ミッションに基づいて働かれている姿勢を感じたり、その精神が浸透しているのが素晴らしいです。浸透させるために取り組まれていることはありますか。
近成さん:当社では、どのようなコミュニケーションにおいてもスピリッツとなっている「バリューが体現できているか」の問いかけが日常的に行われています。上司から部下だけでなく同じスタッフ間でもそのようなやりとりが行われて身近なものとなり、それが脈々と受け継がれています。
ただし、現状に満足しているわけではありません。会社が成長して人数が増えたことでその精神が薄まったり、解釈が分かれたりする可能性は大いにあります。多様な解釈が生まれることには良い点もありますが、「こうありたい」という芯の部分がぶれないよう、ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)を浸透させる努力を重ねる必要があると考えています。
そのような観点から、今年3月には新たな人事制度を導入しました。MVVをより浸透させるためのツールとして、人事制度・評価制度を用いることができないかという思想によるものです。
新人事制度の真意

――新たな制度では、MVVが大きなウエイトを占めるのでしょうか。
近成さん:今回の新制度では、評価を「定量(業績)」と「定性(MVV体現)」の二軸で行います。賞与では定量を重視する一方、昇格では定性=MVV体現の度合いを重視する仕組みです。実績やパフォーマンスを出すことはもちろん重要ですが、プラスアルファでリビングハウススピリッツを体現できる人材を必要なポジションに引き上げたい考えからです。
成果を出すパフォーマンスに長けている人材が必ずしもリビングハウススピリッツを体現できるとは限りません。MVVを自分の言葉で話して体現できる人材こそ、他者の可能性をも引き出し、成長に対するドライブをかけることができる可能性が高いのではないかと考えています。
この改革は次のステージを見据えたものです。会社としてどんな未来をつくりたいか、そこで活躍してほしいのはどんな人か——その議論の積み重ねから、評価制度とMVVを接続するという答えが出てきました。運用開始からまもないため実感を伴っていない部分もあると思いますが、時間をかけて丁寧に説明を重ねて定着させていけたらと考えています。
この改革は、次のステージを見据えたものです。会社としてどんな未来をつくりたいのか、そこで活躍していてほしいのはどんな人なのか——その議論の積み重ねから、評価制度とMVVを接続するという答えが出てきました。
――社内で初めて産休・育休を取得されたのが近成さんだとお聞きしました。女性のキャリアについて、どのように考えていますか。
近成さん:私が産休・育休から復帰した当時とは時代背景が変わっていて、現在復職を望む人たちの考え方も変化しているのではないかと思いますし、第一に当事者の声を拾いながら形作っていきたいと考えています。
現状、当社では産休・育休からの復帰はほぼ100%で当たり前のことになっていますが、復職することだけがゴールではないと思うのです。子育てしながら復職をし、いかにこれまで積み上げてきたことを活かしながら次のキャリアにつながるように仕事していけるかまで考えていく必要があると感じています。
制度としては短時間勤務制度などあくまでも法令で決められたものが基本ですが、制度は制度であり、個別の事情はありますよね。そこで、人事が全面的に入って個々の事情や希望をヒアリングした上で密に話し合い、その上で判断するプロセスを踏んでいます。妊娠がわかったタイミングで面談を実施しますが、「いつでも門戸は開いているので、まず聞いてください」と伝えます。制度でできること・できないこと、公平性の観点からできること・できないことはもちろんありますが、まずは本人の意向を確認するため、希望が通らない場合でも一定の納得感と理解を持ってもらうことができているのではないでしょうか。

現場で体現するビジョン。ライフステージの変化を強みに変える
現場の声を起点に制度やカルチャーを育てていきたいと語った近成さん。その言葉は、実際に店舗でどう体現されているのでしょうか。ライフステージの変化を経てなお最前線に立ち続ける、LIVING HOUSE. BiVi福岡店の藤岡さんにお話を伺います。

――産休・育休を経て復帰されたと伺いましたが、それまではどのようなキャリアを積まれてきたのでしょうか。
藤岡さん:新卒で入社したのも同じ業界で、そこで3年ほど働き、産休・育休を取得しました。そこから5年ほどは専業主婦のように育児に専念したのち、社会復帰したのがリビングハウスが代理店として販売しているブランド・KAREのパートナーショップの初期メンバーとしての仕事でした。
リビングハウスの直営店化のタイミングで転籍し、10年ほど所属しています。その間にまた出産を経験し、職場復帰したのは昨年5月。現在は空間時間デザイナーとして接客販売に従事しています。スタッフ3人の店舗で、日々の店舗業務に加え、テナントのミーティングにも参加しています。
――戻られたのは、やはり仕事が好きだからでしょうか。
藤岡さん:そうですね。仕事内容が好きですし、インテリアも好きです。
新卒当時からこの業界で働いていますが、その販売形態は大きく異なります。前職は安価な価格帯でお客様に好きなものを買っていただくスタイルでしたが、現在はお部屋のサイズ感を伺ったり図面を読んだりした上で自分の知識や経験をもとに接客していきます。前職と比べると自分が経営しているような感覚がありますし、リビングハウスには「お客様のために」という意識も強い。奥深い仕事をさらに楽しんでいますね。
もとはリビングハウスのパートナー企業社員として働いていましたが、当時からリビングハウスのコンサルティングを受けるなどのつながりもあり、入社してからも考え方にズレを感じることなく働くことができています。若い人材が多いためキャリアの長い自分としては必死にならないといけないこともありますが、その分良い刺激も多いです。
生活環境の面など個人的な事情で続けるのが厳しいかもしれないと思うことはあっても、会社が原因で辞めようと考えることはないと思います。理由としては、人がいい。否定がなく、前に向かっていく人ばかりです。何事も実現していく素質のある人たちが言うなら大丈夫だと心から思えるのです。たとえ視点が異なってもスパイスのようで、出来るだけ吸収したいと感じられます。
――産休・育休からの復帰に不安はなかったのでしょうか。
藤岡さん:不安はあまりなかったですね。「産休明けに県外に転勤してください」というようなことがあれば違ったかもしれませんが、そのような不安要素は最初から一切ありませんでした。
産休を当然のこととして選択できる環境であり、産休を伝えた際は周囲から「おめでとう」と言ってもらえましたし、復帰するのも当然の雰囲気です。戻った瞬間に他部署の人からも「おかえり」とメッセージが飛んでくるほどで、この会社にいて良かったんだと自分の存在価値を感じさせてくれる、そんな会社です。
産休・育休からの復帰が当たり前であっても、こうして休職以前と同じ空間時間デザイナーとして店舗勤務に復帰できたのは、時短勤務の制度や急な状況のときに他のメンバーがヘルプに入ってくれる体制があってこそ。環境や周囲の支えによって、復職後も安心してお客様と向き合うことができているのだと、本当にありがたく思っています。
本社との連携がもたらす、物理的な距離を越えた一体感

――藤岡さんの復帰は、全国の空間時間デザイナーとして働く皆さんにとっても心強い存在なのではないでしょうか。
藤岡さん:子育てをしながら正社員の空間時間デザイナーとして働いている私の存在を知ってもらい、産休・育休復帰のロールモデルとなれたら嬉しく思います。
これからライフイベントを迎える皆さんにも、これまでのキャリアを止めないでほしいと願っています。私自身、産休・育休のタイミングでパートやアルバイトの選択肢についても考えましたが、正社員として責任ある立場で社会の中に身を置いていたい、キャリアを活かしたいという軸がありました。そんな自分の軸をぶらさず働きたい、そう思えるように仕事してほしいですね。
私の場合、この店舗でストアマネージャーの選択肢もあった中で、キャリアだけでなく自分の人生全体での理想像を考え、一旦リーダー職は見送り、出産を選択しています。今後どう展開していくかはわかりませんが、空間時間デザイナーだけでも店長だったり、スペシャリストだったり、この会社における“道”は複数存在します。若い人たちの選択肢を引き出し、受け止められる会社だと感じます。
――物理的に本社とは距離がありますが、一体感を感じる瞬間はありますか。
藤岡さん:総会のあるときには集まり、他店とのふれあいもあります。また、毎日のオンライン昼礼でビジョンやスピリッツなどを全店で共有していますし、在庫の貸借や県内外をまたぐ接客が発生することもあり、それほど距離があるとは感じていないかもしれません。数字もしっかり追っていてそれぞれに目標があるので、単に仲が良いというだけでなく、互いに刺激しあえる存在です。
――スピリッツのお話、他の皆さんからもお聞きしています。
藤岡さん:昼礼では毎日一つのスピリッツを決め、それを自分の打ち込んでいることに照らし合わせて各自発表しているのですが、スピリッツって良いですよね。私の場合、子育てもスピリッツに則ってやっていますよ。マネジメントにしてもなんにしても、スピリッツが全ての理由づけになるからこそ皆ぶれないのだと思います。性格的に違っていても、向いている方向が同じだから一緒に働いていけるのではないでしょうか。

「スピリッツは全ての理由づけになる」という藤岡さんの言葉は、新人事制度によって会社が目指す評価制度とMVVの接続が、その完成を待たずしてすでに現場で体現されていることを物語っています。
経営が言葉として掲げて制度として具現化しようとしているビジョンと、現場が日々の仕事や人生の選択の中で自然と実践しているビジョン。両者が同じ方向を向いているからこそ、リビングハウスは物理的な距離を越えて一体感を保っていられるのではないでしょうか。
撮影:高木亜麗(近成さん分)/ 鬼木陽一(藤岡さん分) 文・編集:末松早貴
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