やって終わりでは意味がない 「エンゲージメント調査」の効果を引き出す3つの条件
「毎年、エンゲージメント調査を実施しているものの、結果を見て終わってしまう」
「調査結果をもとに施策を実施しているが、エンゲージメントがなかなか改善しない」
このような悩みを抱える人事担当者も多いのではないでしょうか。せっかく回答してもらうのであれば、調査を “やって終わり” にしたくはないものです。
では、エンゲージメント調査の効果を引き出すには、なにが必要なのでしょうか。本記事では、エンゲージメント調査を単なる従業員アンケートで終わらせず、組織改善につなげるためのポイントを解説します。
エンゲージメント調査をする意味
最初に考えたいのが、そもそもエンゲージメント調査をする意味です。従業員が会社に満足しているかを知るためでしょうか。部署ごとのランキングをつけるためでしょうか。あるいは、昨年よりスコアが上がったか下がったかを確認するためでしょうか。
いずれも調査によって得られる情報ではありますが、それだけでは調査の価値を十分に活かしているとはいえません。米Gallupは、従業員調査の意義について次のように説明しています。
Employee surveys are important because they give leaders structured insight into how employees think, feel and perform.(従業員調査は、従業員がなにを考え、なにを感じ、どのようにパフォーマンスしているかについて、リーダーが体系的な知見を得るために重要です)
(引用:Gallup Employee Surveys: Types, Tools and Best Practices)※日本語訳は編集部による
つまり、調査の目的は点数を出すことではありません。目に見えにくい従業員の状態を可視化し、組織が改善すべき課題を見つけることこそ、エンゲージメント調査を行う大きな意味なのです。
厚生労働省も「令和元年版 労働経済の分析」において、ワーク・エンゲイジメントと組織コミットメント、新入社員の定着率、離職率、労働生産性などとの関係を分析しており、エンゲージメントは単なる「会社への好感度」ではなく、従業員の仕事への関わり方や組織のパフォーマンスを考えるうえでも重要な指標なのです。(参考:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」(第Ⅱ部第3章ワーク・エンゲイジメントに着目した「働きがい」をめぐる現状について)
だからこそ、エンゲージメント調査を実施するのであれば、何点だったかだけではなくその数字をどう使うのか目的意識を持つ必要があります。
エンゲージメント調査の効果を引き出す3つのポイント
とはいえ、「目的意識を持って調査する」と言われても、実際に何をすればいいのかピンとこない方も多いでしょう。実際、現場でエンゲージメント調査を運用する多くの企業が同じポイントでつまずいています。
たとえば、「調査は毎年実施しているが、結果集計で終わっている」「部署別のスコアを一覧にして共有はするものの、それ以上の議論が生まれない」「前回の調査で課題が見えたはずなのに、今回も同じ項目が低いままだった」——こうした状態は、調査自体に問題があるというよりも調査結果をどう扱うかというプロセスに課題があるケースがほとんどです。
エンゲージメント調査の実施自体を目的とせず、実際に組織を変える力にするためには、次の3つのポイントを押さえる必要があります。
1. 調査の目的を明確にする:目的が曖昧なまま調査をしても、どの項目を重視し、どう解釈すればよいかが定まりません。「なにを知り、どんな意思決定したいのか」を先に決めておくことが、すべての土台になります。
2. 結果を対話につなげる:スコアだけでは、「なぜその結果になったのか」という背景までは理解できません。従業員や管理職との対話を通じて、数字の裏にある実態を掘り下げることが不可欠です。
3. 具体的な改善と再測定まで行う:対話で見えてきた課題をもとに、実際に改善策を実行し、その効果を次の調査で確認しましょう。この一連の流れがあってはじめて、従業員は自分たちの声が届いている実感を得ることができます。
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

条件1:調査の目的を明確にして「なにを測るか」を決める
エンゲージメント調査の効果を引き出すために、まず必要なのが調査目的の明確化です。
「とりあえずエンゲージメントを測ってみる」という状態では、調査結果を施策につなげることが難しくなります。なぜなら、なにを改善したいのかが決まっていなければ、どの項目を重視すべきか、どの結果を問題と捉えるべきかが定まらないためです。
たとえば、以下のように課題はさまざま存在しますが、その目的によって見るべきデータは変わります。
- 組織全体のエンゲージメントの状態を把握したい
- 部署ごとの課題を発見したい
- マネジメント上の課題を把握したい
- 人事施策の効果を検証したい
- 経営戦略と従業員の認識にギャップがないか確認したい
単に、「エンゲージメントが高いか低いか」だけを測定しても改善策にはつながりにくいでしょう。重要なのは、「なぜその状態になっているのか」を考えられる情報を集めることです。
たとえば、「マネジメントに課題があるのではないか」と考えている企業であれば、エンゲージメントのスコアを測るだけでなく、上司とのコミュニケーションやフィードバック、仕事上の裁量など、その背景にある要因についても把握する必要があります。反対に、「新しく導入した人事施策が従業員にどのような影響を与えたのか」を知りたいのであれば、施策の認知度や利用状況だけでなく、導入前後で従業員の意識や行動にどのような変化があったのかを比較できるように設計する必要があります。
このように、調査は「なにを測るか」から考えるのではなく、「調査結果を使ってなにを判断したいのか」から逆算して設計することが重要なのです。
条件2:調査結果を「数字」で終わらせず、対話につなげる
2つめの条件は、調査結果を従業員や管理職との対話につなげることです。
エンゲージメント調査では、どうしても「スコア」に目が向きます。「全社平均は65点だった」「昨年より3ポイント上がった」「A部署が最も高く、B部署が最も低かった」——こうした数字は、組織の状態を把握するうえでは確かに重要です。
しかし、数字だけでは「なぜその結果になったのか」を知ることはできません。たとえば、「成長機会」のスコアが低かったとしましょう。その理由は、以下のようにさまざま考えられます。
- 研修が足りない
- 上司との1on1が機能していない
- 新しい仕事を任される機会がない
- キャリアについて相談できる相手がいない
- どのようなキャリアを描けばよいのかわからない
このようなスコアの背景を知るためには、調査結果をもとに従業員や管理職と話すことが大切です。Gallupの調査でも、アクションプランの進め方についてこう述べられています。
Well, there isn’t a “one-size-fits-all” model. What’s important is that the action plan works well for the manager and his or her team. (アクションプランに「唯一の正解」はありません。大切なのは、そのマネージャーとチームにとって機能するやり方であることです)
(引用:Gallup What to Do With Employee Survey Results)※日本語訳は編集部による
実際、あるマネージャーは正式な話し合いの場を設けて全員から意見を集める方法をとり、また別のマネージャーは日々の業務のなかで少しずつ改善を積み重ねる方法をとるなど、進め方はチームによってさまざまです。共通しているのは、「従業員とともに結果を読み解き、なにに取り組むかを決める」という点です。
つまり、全社の調査結果を人事だけで分析して施策を決定するのではなく、現場の声をふまえて具体的な改善策を考えることが重要なのです。
調査で「なにが起きているか」を知り、対話で「なぜ起きているか」を知る。この2段階があってようやく、調査結果を具体的な改善につなげられます。

条件3:改善施策を実行し、「再測定」まで行う
もっとも重要な3つめの条件は、調査結果を具体的なアクションにつなげて再び測定することです。
調査を実施して、「今年はエンゲージメントが62点でした」と社内共有するだけでは、調査の効果は限られたものとなってしまうでしょう。従業員からすれば、「回答した結果、なにか変わったのか」という疑問も残ります。
先述のGallupの報告では、前回の調査で「アクションプランが職場に良い影響を与えた」という項目に強く同意した上位25%のグループはエンゲージメントスコアが平均10%上昇し、逆に同項目が低かった下位25%のグループのエンゲージメントスコアが平均3%低下したというデータもあります。(参考:同上)
もちろん、この結果だけをもって「施策を実施すればエンゲージメントが必ず10%上がる」と考えることはできません。しかし、ここからわかるのは、調査結果に基づいた行動をすることが調査の価値を左右する重要な要素だということです。
さらに、施策を実施すれば終わりというわけでもありません。一定期間を置いて再び調査し、「改善した項目は何か」「変化しなかった項目は何か」「新たな課題は生まれていないか」を確認します。この再測定まで行ってはじめて施策が有効だったのかを検証できるのです。
エンゲージメント調査を「PDCAの起点」として考える
ここまでの3つの条件を整理すると、エンゲージメント調査は次のようなサイクルで活用できます。
①目的を決める —— なにを明らかにし、どう改善したいのかを決める
②測定する —— エンゲージメントの状態とその背景にある課題を把握する
③分析・対話する ——部署やチームごとの違いを確認し、従業員・管理職と結果について話し合う
④改善する —— 優先順位の高い課題を絞り、具体的な施策を実行する
⑤再測定する —— 施策によってなにが変わったのかを確認し、次の改善につなげる
つまり、エンゲージメント調査は単に年に一度実施するアンケートでなく「組織改善のPDCAを回すための仕組み」として捉えることができます。

まとめ|エンゲージメント調査は「やったかどうか」でなく「なにを変えたか」
エンゲージメント調査は、実施すること自体に意味があるわけではありません。重要なのは、調査によって得られたデータを、組織を変えるために活用できるかどうかです。
そのためには、以下の3つの条件を押さえることが重要です。
1. 調査の目的を明確にする
2. 結果を数字で終わらせず、従業員との対話につなげる
3. 具体的な改善を行い、再測定する
特に、スコアを上げるのが目的にならないよう注意が必要です。エンゲージメントスコアは、あくまで組織の状態を知るための指標。スコアアップではなく、調査から見えてきた課題を解決し、従業員がより働きやすく、力を発揮できる組織をつくることこそ、本当に目指すべきゴールです。
調査を起点に組織を変えていく。それでこそ、エンゲージメント調査は企業にとって価値のある施策になるのです。
- Gallup Employee Surveys: Types, Tools and Best Practices
- 厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」(第Ⅱ部第3章ワーク・エンゲイジメントに着目した「働きがい」をめぐる現状について)
- Gallup What to Do With Employee Survey Results
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